第一種電気工事士という資格は、単に筆記と実技をクリアすれば完了するものではありません。試験に合格したあと、実務経験を一定期間積むことが求められるのは、現場でしか得られない判断力や安全への意識が、この仕事では非常に重要だからです。高圧受電設備などの工事は、正確さはもちろん、電力の安定供給や人命に関わるリスクも伴います。だからこそ、国家資格の中でも特に「経験」が重視されています。
こうした実務経験は、資格者が「信頼できる技術者」として認められるための裏付けになります。ただ知識があるだけでなく、それを現場でどう活かすか、どう判断するかという力があってこそ、一人前とみなされる世界です。この背景を知っておくことは、これから資格取得を目指す方にとって重要な一歩になります。
「実務経験」とは何を指すのか?認められる条件を整理
第一種電気工事士の実務経験には、明確な基準があります。まず「実務」とは、電気工事士法に定められた範囲の作業を指します。高圧受電設備の工事や点検、保守に関わる業務が主な対象です。低圧設備しか扱わない作業や、資格が不要な補助作業では、経験として認められない場合もあります。
期間については、第一種の免状を交付してもらうには、通常「3年以上」の実務経験が必要です。ただし、実務の定義や期間のカウント方法については誤解も多く、勤務先が正しく証明書を出してくれるかどうかも重要なポイントになります。たとえば、実務経歴証明書という書類を会社に作成してもらう必要があり、その際、会社が電気工事業者として適切に登録されていなければ、証明として受け付けられないケースもあります。
また、同じ会社で働いていても、工事内容によっては経験として加算されないこともあるため、自分の業務内容を把握し、記録しておくことが重要です。制度上の条件と、現場での実態との間にはズレがあることもあるため、経験の積み方を考える際には、制度の理解と同時に、職場の理解も不可欠です。
実務未経験からでも始められる?最初の就職先の探し方
第一種電気工事士を目指すうえで、「経験がないから働けない」「働けないから経験が積めない」という悩みを抱く方は少なくありません。ですが、未経験からでも実務経験を積ませてくれる企業は存在します。特に、資格支援や若手育成に力を入れている企業は、実務経験の第一歩を踏み出す場として適しています。
最初に注目したいのは、その会社がどのような現場を担当しているかという点です。たとえば、ビルや工場、高圧設備などの工事を手がけている企業であれば、第一種で必要な範囲の実務を積むことが可能です。逆に、住宅の電気工事のみを扱う会社では、高圧設備に触れる機会がないため、要件を満たさない恐れもあります。
また、未経験者歓迎とうたっていても、実際には資格保持者しか現場に出さない会社もあります。求人情報だけでなく、企業の採用ページや社員インタビューを確認することで、育成体制やサポート内容を見極めることが大切です。たとえば、二階堂電設のように、資格取得支援制度やOJT教育を整え、経験の浅い段階から技術者としての道を支援する企業もあります。まずは「実務経験が積める環境かどうか」を軸に、就職先を検討していくことが、将来の選択肢を広げる第一歩になります。
経験を“質”に変える!学びながら働くための視点
実務経験を「年数」だけで測るのは簡単ですが、そこで得た知識や技術をいかに自分の力に変えていくかが、電気工事士としての成長には欠かせません。現場に出れば、図面通りに進まない工事や、突発的なトラブルへの対応、他職種との連携など、教科書では学べない場面が数多くあります。こうした経験に対して、「なぜそうなったのか」「次に活かすにはどうするか」を自分なりに振り返る習慣が、経験の質を高めてくれます。
また、先輩技術者の作業をただ「手伝う」のではなく、どのような配線ルートを選んだのか、使用する材料の意味は何かといった視点を持って観察することも大切です。日々の作業の中に、小さな学びのチャンスが隠れているからです。メモを取る、写真を残す、空いた時間に図面を見直すといった工夫も、自分の理解を深める助けになります。
資格取得のための経験とはいえ、それは単なる「通過点」ではありません。むしろこの期間こそが、今後のキャリアを形づくる土台となります。現場の空気を感じ、技術者としての判断力を育てるこの時間を、受け身で過ごすか、意識を持って吸収するかで、将来の姿は大きく変わっていきます。
働きながら資格も成長も手に入れる職場の共通点とは
実務経験を積む職場として最適な環境とは、どのようなものなのでしょうか。ひとことで言えば「学べる機会が多く、安心して働ける場所」です。具体的には、幅広い施工実績を持ち、第一種の範囲に該当する高圧設備や大型施設の工事に関わる現場が豊富であること。そして何より、未経験者にも段階的に仕事を任せていく体制が整っていることが重要です。
たとえば、社内でOJTがしっかり機能しているかどうか。先輩が常にそばで作業を見てくれる環境があるだけで、不安は大きく軽減されます。また、資格取得に向けた費用の補助や、勉強の時間を確保しやすい労働環境なども、実務経験と学習の両立を支える大切な要素です。
こうした条件を備えた会社の例として、二階堂電設が挙げられます。同社では、若手が早期から実務に携わることを後押しする一方、未経験者にも無理のない形で段階的に経験を積ませる体制が整っています。先輩社員による指導やチーム制の現場運営、資格支援制度など、「実務経験を積みながら育つ」ことが可能な文化があります。
どの企業を選ぶかは、今後のキャリア形成に大きく影響します。職場選びは「給与」や「通勤距離」だけでなく、「成長できる環境かどうか」を軸に考える視点が、より確実な未来につながっていくでしょう。
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「経験者」としての強みを活かし、未来の選択肢を広げよう
第一種電気工事士としての実務経験を積むことは、資格取得のためだけではなく、自分自身の選択肢を増やすことにもつながります。現場で得た知識と技術は、資格を取得した後も、より責任ある仕事や、多様な現場での対応力として生きてきます。
また、一定の経験を積んだ技術者には、将来的に施工管理や現場のマネジメント業務を任される道も見えてきます。人を動かす立場になるには、現場の感覚を知っていることが何より重要だからです。さらには、独立や企業内での昇進といった選択肢も、経験の深さによって現実味を帯びてきます。
どのような未来を描くかは人それぞれですが、実務経験を「こなす」のではなく、「積み重ねる」意識を持つことが、その一歩になります。今はまだ始まりの段階かもしれませんが、日々の経験が確実に自分の力となっていきます。
少し先の自分をイメージしながら、目の前の経験を丁寧に重ねていく。その積み重ねが、確かな自信と未来を支える礎となります。